ハイダーのバランス理論

ハイダーのバランス理論(Heider's Balance Theory)は、社会心理学者フリッツ・ハイダー(Fritz Heider)によって提唱された理論です。この理論は、人々の態度や関係がバランスを保つ傾向があるという考えに基づいています。

ハイダーのバランス理論では、人々の関係を要素やトライアド(三要素の組み合わせ)として捉えます。具体的には、人物A、人物B、および概念Xが関与するトライアドで考えられます。このとき、人物Aが人物Bを好きな場合、人物Bもまた人物Aを好むことが期待されます。このような関係は「バランス」が取れているとされます。

一方で、関係がバランスを欠いた場合、人々は調整を行い、バランスを取ろうとします。たとえば、人物Aが人物Bを好きだが、人物Bが概念Xを嫌いな場合、バランスが崩れています。この状態では、人々は次のような調整を行うことが予測されます。

1. 態度の変更:人物Aが概念Xに対しての態度を変える。
2. 関係の変更:人物Aが人物Bとの関係を変える(例:関係の断絶)。
3. 概念の変更:人物Aが概念Xに対する考え方を変える。

このように、人々はバランスを取るために自分自身や他者の態度や関係を調整しようとする傾向があると考えられます。

ハイダーのバランス理論は、人々の関係や態度の形成と変化に関する理解を深める上で重要な概念です。また、この理論は社会的認知の側面を考慮に入れた観点から、人間関係や集団の動態を解析するための手法としても応用されています。