正常性バイアス

正常性バイアス(Normalcy Bias)は、人々が災害や危機的状況に直面した際に、自身や周囲の状況を通常の状態として認識しようとする心理的な傾向を指します。つまり、人々は通常の状態が継続するという前提で物事を評価し、非常事態や異常な出来事が起こる可能性を過小評価する傾向があるということです。

正常性バイアスは、人々が日常生活で経験する安定した状態や予測可能な状況に対する信念や期待に基づいています。このバイアスの影響を受けると、人々は危機的な状況が発生した場合でも、それを受け入れるのが難しくなります。代わりに、危機的な状況を否認したり、過小評価したりする傾向が生じます。

正常性バイアスの例としては、自然災害や緊急事態に対する反応が挙げられます。人々は自身が災害や危機に遭遇することを想像するのが難しく、災害が実際に発生しても「それは他の人々に起こることである」という認識を持つことがあります。また、災害が予測されている場合でも、人々はしばしば重大さや緊急性を過小評価し、行動を遅らせる傾向があります。

正常性バイアスは、人々が予測不可能な出来事や危機的な状況に対しても常に準備ができているわけではないという現実を反映しています。このバイアスは、一般的には心理的な安定や日常生活の維持に役立つ一方、重大なリスクや危険を過小評価し、適切な対策や行動を遅らせる可能性があるという点で注意が必要です。